「電気主任技術者の資格を、本業以外でも活かせないだろうか?」「専門知識を武器に、もっと収入を増やしたい」
高い専門性が求められる電気主任技術者の資格をお持ちのあなたなら、一度はそう考えたことがあるかもしれません。深刻な人手不足と働き方の多様化を背景に、今、電気主任技術者の副業が大きな注目を集めています。
しかし、実際に副業を始めるには何から手をつければいいのか、どれくらいの収入が見込めるのか、そしてどのようなリスクがあるのか、具体的な情報は意外と少ないものです。
この記事では、「電気主任技術者 副業」と検索するあなたの疑問にすべてお答えします。副業を始めるための具体的なステップから、収入のリアルな相場、成功の秘訣、そして事前に知っておくべき注意点まで、網羅的に解説します。
なぜ今、電気主任技術者の副業がアツいのか?
まず、なぜ電気主任技術者の副業がこれほどまでに有望視されているのでしょうか。その理由は大きく3つあります。
- 圧倒的な需要と将来性: 企業の電気設備保安を担う電気主任技術者は、法律で設置が義務付けられている「必置資格」です。しかし、有資格者の高齢化や若手不足が深刻化しており、多くの企業が外部の専門家を求めています。さらに、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー設備の増加も、新たな需要を生み出しています。
- 多様な働き方と仕事内容: 副業と聞くと、保安管理業務(月次・年次点検)をイメージする方が多いかもしれません。しかし、その知見を活かせる場は多岐にわたります。企業の省エネ対策を助言するコンサルティング、資格取得を目指す人向けの講師、専門知識を記事にするウェブライター、CADを使った図面作成代行など、あなたのスキルや興味に合わせた働き方が可能です。
- 高単価を実現できる専門性: 難関資格である電気主任技術者の専門性は、市場価値が非常に高いのが特徴です。資格と実務経験が直接的に高単価の案件につながりやすく、努力が収入に反映されやすい魅力的な副業と言えるでしょう。
【完全ガイド】電気主任技術者の副業、始め方の5ステップ
魅力的な電気主任技術者の副業ですが、思い立ってすぐに始められるわけではありません。特に保安業務を個人で請け負う場合は、法的な手続きや準備が不可欠です。ここでは、副業を開始するための具体的な5つのステップを解説します。
Step1: まずは本業の就業規則を確認!
最も重要な最初のステップです。会社員の場合、所属企業の就業規則で兼業・副業が認められているか必ず確認しましょう。許可制の場合は、然るべき部署に申請が必要です。トラブルを避けるためにも、本業のルールを遵守することが大前提です。
Step2: 個人事業主として開業する
副業で継続的に収入を得る場合、税務署に「開業届」を提出し、個人事業主になるのが一般的です。同時に「青色申告承認申請書」を提出すれば、最大65万円の特別控除が受けられるなど、税制上のメリットが大きくなります。
Step3: 「外部委託承認制度」を理解する
保安業務の副業を行う上で、核心となるのがこの制度です。本来、自家用電気工作物の設置者は、自社で電気主任技術者を選任しなければなりません。しかし、国が定める要件を満たすことで、保安業務を外部の専門家(電気保安法人または個人事業主)に委託することが認められています。これが「外部委託承認制度」です。
あなたが個人として企業と契約を結ぶには、この制度を利用して、管轄の産業保安監督部から承認を得る必要があります。申請は行政手続きのオンライン窓口「GビズID」を取得し、「保安ネット」から電子申請を行うのが現在の主流です。
Step4: 必要な機材を揃える
保安業務には専門的な測定器が不可欠です。最低でも以下の機材は準備する必要があるでしょう。
- 絶縁抵抗計(メガテスター)
- 接地抵抗計(アーステスター)
- 検電器
- クランプメーター
- その他、継電器試験装置や赤外線サーモグラフィなど
新品で全て揃えると数十万〜百万円以上の初期投資が必要になることも。コストを抑えたい場合は、中古品を探したり、リースやレンタルを利用したりするのも一つの手です。
Step5: もしもの備え!損害賠償責任保険に加入する
電気設備の保安に「絶対」はありません。万が一、自身のミスで顧客の設備に損害を与えたり、波及事故を引き起こしてしまったりした場合、個人では到底負いきれないほどの損害賠償を請求されるリスクがあります。
そのため、個人で保安業務を請け負うのであれば、損害賠償責任保険への加入は必須です。具体的には、業務遂行中の事故をカバーする「請負業者賠償責任保険」や、業務完了後の欠陥に起因する事故をカバーする「生産物賠償責任保険(PL保険)」などがあります。
各地域の「電気管理技術者協会」に加入すると、団体保険として手厚い補償(1事故あたり数億円規模)が用意されている場合が多く、個人で加入するよりも有利なケースが多いため、検討してみましょう。
【案件獲得】副業の仕事を見つける具体的な方法4選
準備が整ったら、次はいよいよ仕事を探すフェーズです。ここでは、副業案件を見つけるための具体的な方法を4つご紹介します。
- マッチングプラットフォームを活用する
近年、専門技術者と企業をつなぐサービスが増えています。「電気主任技術者お仕事発掘ナビ」のような、まさに電気主任技術者の外部委託に特化したマッチングサイトも登場しており、技術者側は無料で登録・案件探しができます。また、「ツクノビワーク」といった建設・設備系のフリーランス向けサイトで案件を探すのも有効です。
- 昔ながらの人脈が最強の武器に
この業界では、今でも人との繋がりが非常に重要です。日頃から地域の電気工事会社やビルメンテナンス会社と良好な関係を築いておくことで、仕事を紹介してもらえるケースは少なくありません。また、引退を考えているベテラン技術者から顧客を引き継ぐ「事業承継」も、安定した案件獲得につながる王道パターンです。
- 転職エージェントに「副業」相談してみる
転職エージェントは正社員の求人がメインですが、「副業可」の求人を扱っている場合もあります。キャリアアドバイザーに「副業」という選択肢を伝えて相談してみることで、思わぬ道が開けるかもしれません。
- 知識を活かしたコンテンツ発信
直接的な保安業務以外にも、あなたの知識を収入に変える方法はあります。資格取得のノウハウや現場での経験談をブログやYouTubeで発信し、広告収入やアフィリエイト収入を得る方法です。また、その専門性が認められれば、資格予備校の講師や、業界専門誌の記事執筆といった依頼につながる可能性もあります。
気になる収入の話。副業でいくら稼げる?
副業を考える上で最も気になるのが収入でしょう。契約形態や業務内容によって単価は大きく変動しますが、一般的な目安は以下の通りです。
保安業務の料金相場
保安業務の委託料は、対象となる設備の電圧や規模によって決まります。
- 月次点検(1件あたり):
- 小規模な高圧受電設備(キュービクル): 月額1.5万円〜3万円
- 規模が大きくなると: 月額5万円〜
- 年次点検(1件あたり):
- 停電を伴う詳細な点検。月次点検とは別に、10万円〜30万円以上の費用がかかるのが一般的です。
副業で目指せる収入モデル
- お小遣い稼ぎレベル(月5万円〜): 週末や本業の空き時間を利用して、近隣の小規模な物件を2〜3件担当するイメージです。
- 本業と両輪レベル(月20万円〜): 計画的に案件を増やし、10件程度の顧客を担当できれば、本業に匹敵する収入も見えてきます。
- 独立も視野に(年収1000万円〜): 副業からスタートし、顧客基盤と評判を確立したのちに独立開業すれば、年収1000万円を超えることも夢ではありません。
単価を上げるための3つのポイント
- 上位資格の取得: 電験三種よりも電験二種、電験一種と上位の資格を持つことで、扱える設備の範囲が広がり、より大規模で高単価な案件を受注できます。
- 特定分野での専門性: 太陽光発電や省エネ計算など、需要が高まっている特定分野の知識と実績を積むことで、他者との差別化が図れます。
- 交渉力と営業力: 自身の技術力や価値を正しく顧客に伝え、適正な価格で契約する交渉力も、収入アップには欠かせません。
始める前に知っておきたい注意点とデメリット
大きな可能性を秘めた電気主任技術者の副業ですが、当然ながら良いことばかりではありません。安易な気持ちで始めると失敗につながるリスクもあります。
- 重い責任とプレッシャー: 電気保安の仕事は、人々の安全と財産を守る非常に責任の重い業務です。一つのミスが重大な事故につながる可能性を常に意識しなくてはなりません。また、顧客の設備でトラブルが発生すれば、深夜休日を問わず緊急対応が求められる覚悟も必要です。
- 本業との両立の難しさ: 副業に時間を割くことで、本業がおろそかになったり、プライベートの時間がなくなったりする可能性があります。時間管理と体力維持が大きな課題となります。
- 孤独な戦い: 個人事業主は、営業、契約、点検実務、報告書作成、請求、経理といった全ての業務を自分一人で行わなければなりません。会社員時代には他の部署が担ってくれていた業務の負担は、想像以上に大きいものです。
- 初期投資と継続的な経費: 前述の機材購入費に加え、車両の維持費、保険料、図書費、研修費など、継続的に経費がかかります。
- 確定申告を忘れずに!: 副業での所得が年間20万円を超えた場合、会社員であっても確定申告が必要です。怠ると追徴課税などのペナルティが課されるため、会計の基礎知識も学んでおきましょう。
まとめ
電気主任技術者の資格を活かした副業は、専門性を直接収入に結びつけられる、非常に魅力的な選択肢です。人手不足という追い風もあり、その可能性は今後ますます広がっていくでしょう。
しかし、その裏には法律の遵守、重い責任、そして自己管理の徹底が求められる厳しい世界があることも事実です。成功のカギは、周到な準備(知識、資金、人脈)と、電気の安全を守るという強い責任感にあります。
もしあなたが副業という新たな一歩を踏み出すことを決意したなら、まずは本業の就業規則確認と、具体的な情報収集から始めてみてください。この記事が、あなたのキャリアプランを考える上での一助となれば幸いです。
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